


中学受験の算数文章題でキーポイントになる単元の一つが「食塩水(濃度算)」です。
「ビーカーの絵を描いて計算しているうちに、小数のひっ算でミスをしてしまう」「問題が複雑になると、何を何で割ればいいのか分からなくなる」と悩んでいませんか?
方程式が使えない中学受験の算数において、食塩水問題を圧倒的なスピードで、しかもミスなく解き明かす最強の裏ワザが「てんびん図(てんびん算)」です。
本記事では、塾で習うものの使いこなしきれていない受験生に向けて、てんびん図の仕組みから、テスト本番で点数を落とさないための「ミスゼロ作図法」、家庭学習での親御さんのサポートテクニックまで徹底解説します。
塾の一般的な教材では、まず最初に「ビーカーの図」を描いて整理する方法を習います。もちろん基本としては重要ですが、テスト本番でビーカー図だけに頼り続けるのは非常にリスクが高いと言えます。
ビーカー図を使った解法は、「食塩水の量」「食塩の量」「濃度」の3要素を毎回公式に当てはめて計算するスタイルです。
この方法の本質は「地道な割り算と掛け算の繰り返し」です。問題が応用レベルになり、3つの食塩水を混ぜたり、途中で水を蒸発させたりすると、ビーカーの数が4つも5つも増え、比例して「面倒な小数のひっ算」が増加します。これが、計算ミスやタイムロスを引き起こす最大の原因です。
食塩水のもう一つの解法として「面積図」もありますが、長方形を2つ並べて書く面積図は、ノートのスペースを取るうえに作図に少し時間がかかります。
これに対し、「てんびん図(てんびん算)」のメリットは圧倒的です。
まさに、テスト中のタイパを最大化するチート級の武器なのです。
「学校や塾で見かけけれど、なぜそれで解けるのか意味が分からない」という状態では、少しひねられた問題で手が止まってしまいます。まずは仕組みを完全に腹落ちさせましょう。

理科の「てんびん(梃子の原理)」を思い浮かべてください。
算数のてんびん図では、理科の要素を次のように置き換えます。
| てんびんの目盛り(位置) | 食塩水の 「濃度(%)」 |
|---|---|
| てんびんの両端 | 混ぜる前の2つの食塩水の濃度(左が薄い方、右が濃い方) |
| てんびんの支点(真ん中の三角) | 混ぜ合わせた後の 「出来上がりの濃度」 |
| ぶら下げるおもり | それぞれの 「食塩水の全体の重さ(g)」 |
てんびん算の最大のルールは、「食塩水の重さの比」と「支点からの距離(濃度の差)の比」が【逆比】になることです。
理科でも、重いおもりの方は支点に近く、軽いおもりの方は支点から遠い場所に吊るさないと釣り合いませんよね。
この「なぜ逆比になるか」は、実は面積図を真横に圧縮したのがてんびん図だと考えると一発で分かります。
面積図で2つの食塩水を混ぜるとき、「飛び出た長方形の面積」と「へこんだ長方形の面積」が等しくなります。面積が等しいということは、「縦の長さ(濃度の差)× 横の長さ(食塩水の量)が一定」になるため、縦と横の比は必ず「あべこべ(逆比)」になるのです。
仕組みがわかったところで、実際の入試やテストでよく出る3つのパターンを解いてみましょう。
【例題1】5%の食塩水200gと、14%の食塩水100gを混ぜると、何%の食塩水になりますか。
| てんびんを描く | 水平な線を引いて、左端に「5%」、右端に「14%」と書きます。 |
|---|---|
| おもりを吊るす | 左端の下に「200g」、右端の下に「100g」と書きます。 |
| 重さの比を出す | 200g : 100g = 2 : 1 です。 |
| うでの長さを逆比にする | 支点から左端、右端までの長さの比は、逆になって「1 : 2」になります。 |
| 全体の長さを分ける |
てんびん全体の長さ(濃度の差)は、14% − 5% = 9%分 です。これを「1 : 2」に比例配分します。 |
| 答えを出す |
左端(5%)から右へ比の「1つ分(3%)」進んだところが支点(答え)です。 |
【答え】8%
「水には塩が入っていないのに、どうしててんびん図で解けるの?」と迷う定番のひっかけです。
【例題2】12%の食塩水400gに、水を200g加えると、濃度は何%になりますか。
【答え】8%
※水を蒸発させる場合は、「出来上がった濃い食塩水」と「蒸発した水(0%)」を混ぜたら元の食塩水に戻る、という逆向きのてんびん図を作れば同様に秒殺できます。
塩を直接入れる問題も、極端な数字を裏ワザとして適用します。
【例題3】8%の食塩水450gに、食塩を50g加えると、濃度は何%になりますか。
【答え】17.2%
てんびん図はスピードが抜群な分、書き方を雑にすると「比を入れ替えるのを忘れた」「どちらがどちらの比か分からなくなった」というミスが起こります。テストで満点を取るための「ミスゼロ作図法」の3原則を徹底しましょう。
問題文に登場した順番に書くのはNGです。数直線と同じように、「必ず左が小さい数字(薄い)、右が大きい数字(濃い)」というルールで統一させましょう。この向きを固定するだけで、「答えが混ぜた食塩水よりも濃くなってしまった」といったあり得ないミスを直感的に防げます。
てんびん図の上下に数字をメモする際、比の数字がごちゃ混ぜになりがちです。
| 重さの比(てんびんの下) | 数字を 〇 で囲む |
|---|---|
| うでの長さの逆比(てんびんの上) | 数字を □ で囲む |
このように記号を明確に書き分けるルールを作ると、お子さん自身が「今はうでの長さの比(□)を計算しているんだ」と視覚的に認識でき、計算ミスがゼロになります。
「A、B、Cの3つの食塩水を混ぜる」という応用問題で、てんびんに3つのおもりを吊るそうとして混乱するケースが非常に多いです。
3つ以上の混合は、「まずAとBのてんびん図を描き、合体してできた新しい食塩水のおもりを使って、最後にCと混ぜる(2回目のてんびん図を描く)」という「2段階合体」が鉄則です。焦らず1対1で処理するのが最速ルートになります。
てんびん図は魔法のツールですが、保護者の方が教える際に「形だけ丸暗記させる」のは非常に危険です。家庭学習のサポートでは、次の2点を意識してください。
難関校の入試では、「ビーカーから食塩水を100g捨てて、代わりに同じ量の水を入れ、さらに塩を加える…」といった複数の操作が絡む問題が出ます。
こうした問題では、「今、ビーカーの中に何グラムの塩が残っているか」を基本公式で計算してからでないと、てんびん図をセットできません。「基本公式は塩の重さを追うための道具」「てんびん図は混ぜ合わせを秒殺するための道具」と、用途を明確に分けるように教えましょう。
塾で「面積図」を中心に指導されており、「塾と親の教え方が違う!」と戸惑っている場合は、無理にてんびん図を押し付ける必要はありません。
そんな時は、「面積図をぐしゃっと真横に押しつぶして、一本の棒にしたのがてんびん図なんだよ。使いやすい方を選んでいいよ」と声をかけてあげてください。どちらも本質(逆比を使うこと)は全く同じだと分かれば、問題の難易度やスペースに合わせて自分で使い分けられるようになります。
最後に、組み分けテストや志望校判定模試の直前に見直すべき最重要ポイントをまとめました。ページを保存して、テスト当日の朝の最終チェックに活用してください。
| チェック項目 | ミスをなくすチートルール |
|---|---|
| てんびんの左右 | 必ず 左に「薄い(%)」、右に「濃い(%)」 を書く |
| 逆比のルール | 重さの比から、うでの長さを出すときは 必ず左右をクロス(逆転)させる |
| 「水」を混ぜる時 | 水は塩ゼロ! 「濃度0%のおもり」 として左端に置く |
| 「塩」を混ぜる時 | 生の塩は純度マックス! 「濃度100%のおもり」 として右端に置く |
| 作図の囲み記号 | 重さの比は 〇 、うでの長さ(逆比)は □ で囲んで区別する |
| 3個以上の混合 | 焦らず 2つずつ順番にてんびんで合体 させる |
食塩水(濃度算)は、てんびん図の「あべこべ(逆比)」の心地よさを掴んでしまえば、お子さんが自分から進んで解きたくなる「ボーナスステージ(得点源)」に変わります。
ぜひ今度の家庭学習で、親子で一緒にてんびん図を描いて、複雑な問題が魔法のように秒殺できる快感を味わってみてください!